採用経験が少ない設計事務所向けに、労働基準法違反とならない求人作成のポイントをまとめています。設計事務所の勤務実態にマッチする働き方や労働法の基本を具体的に解説します。

労働条件通知書に記載が必要な事項は、求人作成時にあらかじめ決めておきましょう

フリーランチでは設計事務所の求人作成を多数サポートしていますが、労働条件通知書に必ず記載しなくてはいけない事項については、募集時にあらかじめ決めておくことをお勧めしています。

労働条件通知書は、労働契約を結ぶ際に働き手に待遇などを通知するもので、通知は採用側の義務とされています。

労働条件通知書には「絶対的明示事項」といい、必ず記載しなくていけない条件が決まっています。絶対的明示事項には、就業時間や休日など労働する上で基本的な事項が挙げられています。

労働条件通知書に記載する主要な項目について、作成時に注意すべきポイントを解説して行きましょう。

最低賃金は必ず確認しましょう

最低賃金は毎年変化しています。2019年3月現在の東京の最適賃金は時間当たり985円ですが、2019年中に1000円を超えることが予想されています。

月間の労働日が平均20日、1日の労働時間が8時間の場合、160時間が月間の労働時間となります。最低賃金の月額は、時給×労働時間で算出されます。この場合、985円×160時間=157,600円が最低賃金です。

東京の設計事務所で、基本給が16万円を割り込んでいる場合、最低賃金に抵触している可能性があります。

最低賃金は知らないうちに違反しやすく、働き手からも追求されやすいポイントです。また、みなし残業制を採用している場合なども、時間当たりに計算してみると最低賃金を下回っている場合があります。

また、数年前に設定した給与のままだったために最低賃金を割り込んでしまっていることも考えられます。最低賃金の確認は、定期的に行いましょう。

休日の考え方を決めましょう

労働時間が週40時間の場合、週休2日が必要です。しかし、土日に打ち合わせが入りがちな住宅系の設計事務所は、固定的に土日が休日だと休日出勤が頻発してしまいます。

こういった場合は、会社の実態に合わせた休日を設定することで、休日出勤を回避できます。

まず、通常の休日の設定方法でも、水土や水日など土日以外の休日を固定的に設定することは可能です。例えばハウスメーカーや不動産会社などはそういった運用をしていることも多いです。

しかし、働き手にとっては連休がなくなりがちだったり、子供ができた場合に都合が合わなくなるなど、不満が持たれやすい側面もあります。

より変則的に休日を設定する方法として、シフト制があります。例えば週によって水日休み、土日休みを交互に設定するなど柔軟な運用が可能となります。

ただし、シフトの始まる7営業日前などにシフトを書面で通知する必要があります。シフト制は突発的な予定に合わせた運用はできない点に注意してください。

みなし残業を正しく理解しましょう

みなし残業とは、固定残業代ともいわれ、決められた時間分の残業代をあらかじめ含めて給与を支払う制度です。残業代を前払いするような制度といえます。

発生が見込まれる残業代が固定的に支払われるため、働き手にとっては、おおよその残業時間が把握できるようになります。また、残業の報酬額が伝わるため、安心感を持って求人に応募することができます。

設計事務所にとっては残業代の変動幅が少なくなるため支出が安定し、残業代の計算が簡単になるというメリットがあります。

ただし、あらかじめ設定していた残業時間をオーバーした分の残業代は、支払う必要があるので注意してください。

働き方について決めましょう

フレックスタイム制、シフト制、裁量労働制など、働き方を決めることで不要な残業代の削減や働き手の自由度向上につながります。

フレックスタイム制

必ず出勤している時間帯(コアタイム)と出退勤が自由な時間帯(フレキシブルタイム)を設定するのが一般的です。終業時間前に直帰して労働時間をへらしたり、忙しくない時は早めに退社するなどして、残業時間を調整することができます。ただし、あらかじめ決めておいた1か月の労働時間の上限を超えた労働には残業代を支払います。

シフト制

9:00からの出社や、11:00からの出社など、就業時間をずらせる制度です。従業員それぞれの就業時間を調整するといった運用が可能です。ただし、シフトは7営業日前などに書面で通知することなど、ルールを守って運用することが求められます。

裁量労働制

働いた時間にかかわらず、定時まで働いたとみなす制度です。具体的には、6時間だけ働いた日も10時間働いた日も8時間分の労働とみなすといった運用がなされます。建築系の職種の中では設計監理を行う建築士やインテリアコーディネーターなどに適用できます。

本来は裁量権の多い専門職や企画職のための制度なので、習熟度が低い働き手には適用できません。例えば設計事務所のスタッフ全員を裁量労働制で雇用するのは違法とみなされる場合がほとんどです。

適正で会社の実態に合った求人を作成しましょう

今回は設計事務所が求人を作成する上で特に間違えやすいものをまとめました。

労働法は複雑ですが、詳しく具体的なアドバイスが得られれば、事務所と働き手の実態に合った制度の設計と柔軟な運用が実現できます。

フリーランチはあなたの会社の実態に適した労働法の運用方法をアドバイスいたします。働き方や休日の制度設計や適正な求人の作成などについて、具体的なアドバイスをご希望の方はフリーランチにご相談ください。